
学生の所感
常に一つのことを色々な角度から考える、
一見関係ないことをつなげて考える習慣がついた。スタジオ・ゼミの活動
海外研究スタジオ

朴スタジオ
朴スタジオでは文献の輪読にくわえて、フィールドワークを実践しながら、日本国内に見られる異文化を研究しています。
たとえばキリスト教は異文化理解においてとても重要なテーマですが、実は東京都心のど真ん中にもたくさんのキリシタン関連遺跡が残っています。都市開発の中で隠れている「日本の中の異文化」を探し出し、それらの史跡に歴史学、宗教学、芸術学、建築学といったさまざまな学問の立場からアプローチしています。

長谷川ゼミ
長谷川ゼミでは、ゼミ生が事前に提示したテーマに従い、フランスやフランス語圏諸国を訪問調査しています。2019年度は「食文化と観光」をテーマに、チョコレートやビールなどの食材で知られるベルギー・リエージュ州に滞在しました。同州の小都市ヴェルヴィエにある中堅ショコラティエ(チョコレート職人)の「ダルシー(Darcis)」工房とそれに併設されているチョコレート博物館を訪問、なぜ当地やベルギーがチョコレートの産地となっていったのか五感に訴える展示や体験を通じて、時間空間的に学びました。
社会文化批評スタジオ

高橋スタジオ
ジャーナリズム・スタジオでは、福島第1原発事故の被災地に実際に足を運び、被災住民や避難経験者らの声を聞き取り、それを学生自身の手で原稿化し、冊子を作成しています。
このほかにも、難民や外国人、被爆者など社会問題の当事者から「生の証言」を聞き、それをもとにしたディスカッションを行う活動もしています。これらの実践的な活動を通じ、社会問題のとらえ方、ジャーナリズムのあり方を学んでいます。

清田ゼミ
清田ゼミでは精神分析をベースに身の回りの様々な事象について考えていきます。身の回りの中心にいるのはもちろん「私」(自我)です。ところがフロイトは「自我は自分の家の主人ではない」と言っています。ラカンはこれを別の角度から「欲望とは他者の欲望」と言いました。あなたが欲しくてたまらないもの、それはあなたが決して手に入れることができないものです。
清田ゼミでは、この「手に入れることができないもの」を探求していくことで、各自各様の「私」の真の姿に迫ります。辛く厳しい道のりですが、実り豊かな体験でもあります。
社会分析スタジオ

共同スタジオ
社会分析スタジオでは、グローバル化の中で地域社会が内包する様々な現象・課題を問うための調査方法を学んでいます。
複数の教員の指導の下で、文献調査やインタビュー調査といった定性的手法を実際に体験したり、ソフトウェアを使用した統計分析といった定量的手法を通して、実践的に社会調査に取り組んでいます。(この授業は社会調査士の資格取得プログラムの一部となっています。)

松本ゼミ
文化人類学は、フィールドワークを通して、自らが「他者」「異文化」と感じる存在の理解を目指す学問です。その過程は、対象を異なると感じる自分自身の視点を問い直し、偏見や固定観念を内省する作業でもあります。
卒業論文では、この文化人類学の視点から、社会的マイノリティの支援や観光まちづくりなどの「社会問題」、就活、婚活、終活などの様々なライフステージに関する事柄、身体加工やポピュラー文化の実態調査など、学生が自分の関心で研究を進めています。
文化創成スタジオ

カルパントラ・スタジオ
映像制作・分析スタジオでは技法を学びつつ、映画・映像の哲学的な側面についても考えています。2021-2022年度は映画における「死」の描写を取り上げました。
映画の世界で人が「死ぬ」ことは珍しくありませんが、演者が実際にカメラの前で死ぬわけではありません。つまり、人が「死ぬ」瞬間は映画が制作物(偽物)であることを暴く瞬間でもありますが、それでも観客は映画の内容を「信じる」ことになります。この奇妙な現象はどこから生じるのか?映画作家たちはそれをどう捉えてきたのか?分析と実践を重ねながら考察していきました。

榑沼ゼミ
この地球という惑星に誕生したサピエンスの歴史のなかで、都市とは果たして何だったのでしょうか。そして都市はサピエンスだけのものなのでしょうか。私たちはどのような都市や社会、そして世界に生きることを欲するのでしょうか。現代の都市を超えるものをどのように私たちは想像することができるでしょうか。
《私たちはどこから来たのか 私たちは何者か 私たちはどこへ行くのか》と問いかけるポール・ゴーギャンの絵にも導かれつつ、人間、社会、自然の関係や、都市、社会、文明の未来の可能性について、ともに考えてみませんか。
ショートビジット(SV)体験記
皆さんは「外国人」になったことはありますか?
私は2年次に台湾SVに参加し、人生で初めて海外に行きました。忘れもしない、初めて口にしたペットボトルのお茶の味。お茶なのに甘いのです。意味が分かりません。市場のおばちゃんはご飯を食べながらお客を待っています。平気でスマホを触っています。「変わったところだな」と思いました。しかし冷静に考えれば、「台湾が変わったところ」なのではなく、台湾から見れば「私が変わった人」なのです。この考え方は20年間日本を出ずに生きてきた自分にとってとても衝撃的なものでした。台湾で過ごした10日間は、学習面だけでなく、それ以降の私の生活に大きな影響をもたらしました。可能な限り、物事を様々な立場から考えようと思うようになりました。今まで興味を持っていなかった分野に積極的に目を向けるようになりました。机に座って何時間勉強しても学ぶことができない、本当に貴重な経験ができました。
SVでは、観光旅行では普通行かないようなディープなスポット(大衆食堂や、地元の人向けのスポットなど)をたくさん巡ることができます。そして現地について熟知した先生、心強い先輩や同級生とともに行動するため、現地語が分からなくても問題ありません。これまで海外に行ったことがない人、行ったことはあってももっと深く知ってみたい人、ぜひ、SVに参加してみてください。きっと想像以上の経験があなたを待っていることでしょう。
答え合わせはまたいつか
あまりにSVが充実していたため、卒業までにもう一度訪台しようと考えていました。しかし、コロナの影響でそれは叶いませんでした。後悔ではありませんが、学生生活を振り返って「惜しいな」と思うことの一つです。ただ、この2年間で新たな台湾についての知識や興味が増えました。台湾を知ることが新しく趣味になりました。卒業しても、コロナが落ち着いたら台湾に行って、それらを確かめてこようと思っています。単位のため、成績のためではない、純粋な「興味のかけら」が、私の大学生活には落ちていました。そして私はそれを見つけることができました。皆さんも、それぞれの「興味のかけら」に出逢えますように。

卒業生ロングインタビュー
(社会分析スタジオ/江原スタジオ、2021年卒、現在は国家公務員)
なぜこの学科に進学しようと思いましたか?
2つ理由があります。一つはもともと横浜国大に行きたかったんです。小学校の時に文化祭に連れて行ってもらった時に、とても楽しくて。入ってみたら、こんなに森の中だったっけ、と記憶と違ってはいたんですけど(笑)。もう一つは、世界史と公民が好きで、高校の社会の先生になりたくて人文に入りたかったんです。だけど、そこがなくなるというから驚きましたし(笑)、新しい学科は先生の資格が取れないらしいと。でも横国に入りたかったので来ました。
印象に残っている科目はありますか?

1年の時は格差の授業が大きかったですね。私が社会学を勉強しようと思ったきっかけなので。鎌原先生の国際政治学講義の影響も大きかったです。今ノートを見ると鎌原先生の似顔絵が描いてありますね(笑)。この授業では、権力を持つとはどういうことか、とか、バランス・オブ・パワーや戦争の話などがメインで、これで私は国際政治系のことに興味を持つようになりました。それまでは地方の現場で仕事をするイメージを持っていましたが、もう少しマクロな視点で見たいなと思って、それが国連やOECDなどと仕事をする今の仕事にもつながっています。
江原先生との出会いも大きかったですね。ジェンダーにはまったのは江原先生の影響です。女性の支援にどうして公が踏み込めないのか、女性を性的に見るときの男性の心理とか、それを容認する社会の仕組みとか構造の話が興味深かったです。スタジオが始まったら生活がスタジオだけになって、サークルにどんどん顔出さなくなったんですけど(笑)、スタジオの方が楽しかったですね。双方向なのが楽しかったです。自分が持ってきたものを聞いてくれる人がいて、反応を返してくれる人がいて、自分で書いたものを添削してくれる先生がいる。
その意味では辻先生の授業も、英語の文献を読んで、自分で口頭で説明しなければいけなかったので、本当に当時は大変だったんですけど、今仕事で英語を使っているので、振り返ってみるとすごく良かったです。
卒論は大変でしたね(笑)。大人になったら毎週卒論やる以上の量を読んで勉強して書かなければいけないので、卒論が出来なかったらその先も1ミリもできない。あの時は文献なんか1冊も読めないと思っていましたけど、今って毎週レポートを読んで、日本語訳するとか、自分たちの声明を作る仕事をしているので、卒論ができなかったら仕事は1週間も持たないですね(笑)。やっぱり経験値じゃないですか。自分で書いたり読まないと分からない。ちょっと昭和チックだけど、卒論はしっかりやっておいてよかったなと。

進路はどのようなタイミングで決めましたか?
3年生の5月6月ですね。周りがインターンとかを2年の頃にやり始めていて、焦りがあった中で、安定を考え、また国家政策に興味も出てきていたので省庁を考えるようになりました。あと福利厚生も重視しました。一人だろうと所帯を持とうと、子供が出来ようができまいが扱いは悪くならずに仕事はしやすいだろうと思って国家公務員を考えましたね。実際働いてみても国会対応さえなければ女性が働きやすいところです(笑)。
卒業して振り返ってみると自分は何を学んだと思いますか?また、それは仕事にどう活かされていますか?
うちの学科は卒論がハードだったと思うのですが、自分で調べて自分で書かなくてはいけなくて、あれは筋トレに近いと思ってます。それは大人になってめちゃくちゃ役に立っていると思います。テレワークで毎日200件ぐらいのメールが届くのですが、膨大な情報をざっと読み、何が重要な情報なのかを把握して、まとめる力というのは、筋トレによって身に付いたと思います。卒論の時はニキビができるぐらい凄い大変だったんですけど(笑)、やってよかったですね。

学科への今後の期待はありますか?
2つあります。研究面としては文系が追いやられている中で存在感を発揮していただきたい(笑)。
あと、社会に出て思ったのは、自分が絶対に正しくて他の人の意見を聞かない短絡的な人、前例踏襲だけする人とかが多くて、学科で会えるような建設的な人、例えば1足す1を4にするような人に出会えることってなかなかない。幾通りも可能性を考えて、人に配慮できる人たち、こういうバックグラウンドの人にはこういうことを言ったら傷つくのではないか、こういう政策を出したらこういうバックグラウンドの人が零れ落ちてしまうのではないか、という想像力を駆使できる人は世の中に少ない。そういうことを考えられる人材を輩出してほしいです。
在学生インタビュー(2021年度)
(文化創成スタジオ/カルパントラスタジオ)
なぜこの学科を志望しましたか? 学科で何を学ぶつもりでしたか?
僕はもともと高校時代理系だったんですけど、ただ理系の成績がよかっただけで、周りとのギャップというか、周りは医者を目指しているとか、研究者になりたいとか、すごいモチベーションを持って取り組んでいたんですけど、僕はあまりモチベーションというのがなくて。
でも、僕は映画が好きで、映像制作をやってみたいという気持ちが強かったので、そういう映像制作、人間科学系、芸術とか文化を学べるところに行きたいなと。都市社会共生学科は理系でも受験できるところだったので入ったんですけど、やっぱりそういう人文系、特に映画とか芸術関係を学びたくて入った感じですね。

入学前の印象と入学後の印象はどうですか?
僕は高校2年生の時にオープンキャンパスで横浜国立大学を見学したんですけど、緑が多くて、キャンパスの雰囲気が気に入ってて。入ってからもあまりそのイメージは変わりません。学びたいこととのギャップもなくて、本当に自分のやりたい映像制作とかにも携われるんだなっていうふうに思えましたね。ただ、立地の悪さはちょっと想定外でしたけど。それ以外は悪いギャップとかはなかったですね。こういうことが学びたいんだよなって一年生の時に思ってました。

実際に中心的に学んだことや印象に残っている科目などはありますか?
そうですね、やっぱり映像制作系のファビアン・カルパントラ・スタジオで映像制作したのが一番直接的に関われる授業だったので、一番力が入っていたと思いますし、一番印象に残っているんですね。学問として映像制作に取り組める機会っていうのはこの時期本当に貴重だと思うし、しかもただ映像制作をやるっていうだけじゃなくて、予備知識としていろんな文献や映像資料とか、講義的な感じで教えてもらったりもしたのでそこは部活では得られないところですね。

学生生活には満足していますか?
学生生活にはだいたい満足していると思います。コロナとかはありますけど、まあそれはしょうがないことなんで。コロナ渦なりにも結構楽しめてやっていけてるんじゃないかなって気分的には思ってます。不満があるとすれば、立地ぐらいですかね(笑)。
(社会文化批評スタジオ/清田スタジオ)
この学科を選んだ理由について聞かせてください。
最初は建築について学びたいと思っていました。身体は建築によって変化するので、よりよい空間に住むことがより良い社会につながるのでは、と思っていました。でもある時、それは怖いことではないかと気づいたのです。誰かが決めた空間の中で、自分の頭で考えずにただそれに従えば大丈夫かというと、そんなことはないでしょう。私を取り囲む都市は、常にそういう側面を持っています。一方で100%誰かに操られているわけではない。この学科はその境目にいられるのではないか? 都市科学と文理融合は、私の考えたいテーマに合っていたと思います。

実際にこの学科に入ってみてどうですか?
割と好き勝手できて楽しいです。自分の好きなことや気が合う仲間とゆるやかにつながれている感覚があります。誰かと深く関わったり、仲良くしなくてはならないわけではないので、受け入れられる価値観の中で生きられる反面、偏ってしまわないか不安もあります。
今は私の生活の中で文章を書くことが一番大きなウェイトを占めています。所属している精神分析の清田スタジオは、そもそも文章を書くことがメインなところなので……。純粋に自分と文章の1対1をする場がおもしろいと思います。

コロナ禍の環境も1対1を後押ししてくれますね(笑)。ただそれは入学前に思い描いていた華やかな学生生活と違うのでは?
全然違います。というか、コロナ以前がどうだったかも知りません。普通に友達を作ることさえできない環境で、与えられた課題をやって、世間からは「大学生の本分は勉強なんだからいいだろう」と言われ、「一体私は何してるんだろう?」と思いました。今は対面講義も復活しましたが、コロナ禍の環境を過剰に美化することはできません。

まだまだ出口が見えない状況ですが、今後の展望について聞かせてください。
コロナのある日常が当たり前なので、これから以前とは変わっていく部分もあると思います。特に不安には思っていません。1番は自分の専門をどうするかに頭を悩ませています。人文系の学問分野を幅広くカバーする学科にいるので、好きなこと、興味のあることはなんでもできますが、軸足をどこに置くのかを選ぶのは私です。自由だからこその贅沢な悩みですが、自分の好きなことと向き合うのは、難しくて悩ましく、放り投げたくなるときもあります。