須川 亜紀子
文化研究の魅力は
数字では測れない情報のなかにある
先生の研究分野について教えてください。
私はマンガ、アニメ、ゲームなどのポピュラー文化を研究しています。近年は、「2.5次元文化」という、二次元のマンガ、アニメ、ゲームの物語やキャラクターを、三次元の現実の身体で実践するものについて興味を持っています。
たとえば、マンガ、アニメ、ゲームを忠実に再現した2.5次元舞台、コスプレ、映画館でアニメ映画や実写映画を応援する応援上映、Vtuberなどもその対象です。
具体的にはどのような研究をされているのですか?
特に、女性がどのように作品に描かれているかや、女性ファンの研究です。たとえば、アニメの中で女の子のキャラクターの外見、性格、物語上の立ち位置などを分析したり、2.5次元舞台の女性ファンが、コンテンツをどう消費し、他のファンとどう交流しているのか、そのネットワークが、女性のエンパワメントとどう関係するのか、などを研究しています。
アニメ、マンガ、ゲームというと、「クールジャパン」として売れるなど経済的な面が注目されがちですが、
文化を研究する魅力を教えてください。数字にでてこないものを見るというのが魅力でしょうね。たとえば、ファンは同じグッズを複数購入したり、同じ舞台を何度も鑑賞したり、他のファンに有益な情報を与えたり(時には誤情報も)、必ずしも自分の利益になるために行動しているわけではないです。最終的には、自分の幸せにつながっているのですが、キャラクターに対する「愛」や、同じ作品、キャラクター、俳優・声優のファンということで、お互いに助け合ったり...そうした数字では測れない質的な情報を調査することが、おもしろいです。ファンたちの考え方や行動がどう社会から影響をうけているのか、そして影響しているのかというのも見えてきます。
これから受験する高校生のために、先生がどんな授業をしているか教えてください。
アニメやその周辺文化を概観する「現代ポピュラー文化論」、「ジェンダーと共生(文化)」などを担当しています。スタジオ教育では、「芸術文化スタジオ」の一つをもっています。今年度は、このキャンパスを案内するのに、ポピュラー文化を使ってみようというコンセプトで、キャンパスを4つのエリアにわけて、冒険ゲームのようなクエストを行うという「横国クエスト」を学生と作りました。各エリアにオリジナルキャラクターを作って、そのエリアにちなんだ物語を作り、謎を解いていくものです。それを解いていくと、知られざる横国の歴史や見逃しているものなどを発見できるという試みでした。
最後に、受験生に対してメッセージをお願いします。
はい。ポピュラー文化に興味があってもなくても、私たちはポピュラー文化に囲まれて生きています。そうした日常に入り込んでいるものに目を向けて、それにどんな効果があるのか、また私たちはどうそれを利用しているのかを考えてみると、普段見過ごしているものが見えてくるかもしれません。そんな世界を知りたい方を歓迎します。
ポピュラー文化研究、2.5次元文化研究
現代ポピュラー文化論講義、
現代ポピュラー文化論演習、
ジェンダーと共生(文化)